拙著「中小企業のためのやさしい資金繰り」発刊に際して
「景気は緩やかに持ち直し」の政府発表とは裏腹に、中小企業にとってはデフレ、円高、震災影響など厳しい試練が続いています。この試練を乗り越えるために、欠かせないのが「資金繰り知識」なのです。
ある出版社は筆者にこう言いました。「金融円滑化法で倒産が減り、企業には楽観ムードが広がっている。いま、誰も資金繰りには興味を示さない」。確かに、給料ダウン、高失業、株安持続など不況を物語る指標もあるが、意外なことに企業倒産は落ち着いています。でも、この状況を筆者は油断とみるのです。資金繰りのコワさを痛感するシーンの到来を否定できないと考えます。
また中小企業には、不況克服はもちろんのこと、新分野進出などによって、地域経済再生のリード役になってもらいたいのです。この新分野進出を行う際にも、資金繰りは必須なのです。
本書の特徴は次の点です。
▼ 初心者にもわかる簡単な表を使います。
・ 簿記をまだ勉強していない方でも理解できるよう、最もシンプルな表を用いました。簿記を勉強するヒマがないと言われる方、経営者、創業者、新入社員など、に本書をお奨めしたいのです。
▼ 表作成、分析、実績チェックの流れを紹介。
・ 資金繰りは表を作れば完了するものでなく、修正を繰り返しながら、行うものです。したがって、修正までの流れを大雑把につかむべきです。
▼ 資金繰りを楽にする理クツをやさしく解説します。
・ 目的は、カネ繰りを楽にすることです。不足するカネを、とりあえず間に合わすためではありません。楽になる理クツをマスターすべきです。
本書によって、一人でも多くの方に資金繰りを知ってもらえれば幸いです。
資金繰り病③ スター商品衰弱症
最近よく見られる資金繰りの病気の3番目は「スター商品衰弱症」です。
この病気の困った点は、本人の自覚症状が弱いことです。実際は弱ってきているのに、まだまだ頑張れると空元気を出してしまうのです。
この実例は、日本のテレビです。まだまだ国際競争力があるとみられていましたが、日立製作所やソニーなど名立たるメーカーが今回、生産縮小に踏み切ることになりました。 www.sankeibiz.jp/business/news/120316/bsb1203160502001-n1.htm
「スター商品衰弱症」の症状は次の点です。
▼ スター商品売上の金額は依然大きいものの、伸び悩んでいる。
▼ 同商品の粗利益は、値引き・運賃負担等を勘案すると低下し続けている。
▼ 強力なライバル商品が追い上げてきて、品質・機能の優位性が失われている。
この症状のある企業には、機能向上によりスター商品の競争力を回復できるか、スター商品を撤退または縮小し新商品に進出すべきか、精密検査を受けられることをお奨めします。
モノ作りを呼び覚ますデザイン力
フェラーリ設計者として著名な奥山清行氏が、故郷の山形で社長が同級生の㈱菊池保寿堂とコラボ開発した、鋳物ティーポット「繭」が欧州で好評だと言います。同氏に触発された菊池保寿堂の職人たちは、息を吹き返したのです。
eikojuku.seesaa.net/article/225352945.html
ヒットの秘密は次のとおり。
▼イタリア人以外でフェラーリをデザインした世界でただ一人の奥山清行氏のデザイン力。
▼㈱菊池保寿堂は創業400年の鋳物メーカーで薄さ2㎜の鋳物の技術を有する。
▼ティーポットが欧州レストランの雰囲気作りに好適。
ところで、わが地元広島には、カーデザイナーもモノ作りメーカーもいます。このようなコラボがあちこちで実現することを期待します。
意外に身近な新分野
鰹節問屋の中弥商店が10年前に始めた新分野の事業は「そば屋」。このアイデアは、得意先のそば屋に配達を繰り返すうちに思いついたと言います。
このそば屋、店名を「そばよし」といいますが、日本橋界隈では有名な店で、行列ができるほど繁盛しているそうです。
wbslog.seesaa.net/article/247527022.html
繁盛の理由は次の通り。
▼ 13代続く鰹節問屋のブランドを活用。
▼ 鰹節の売買では利ザヤが稼げなくなると飲食への進出を決断。
▼ 鰹節を原料に本格的なそばつゆを使用。
▼ 人通りの多い東京・日本橋の自社ビルで営業。2階は鰹節工場。
値引き競争の厳しい業界で苦戦されている経営者は、既存事業に関連のある新分野を探してみてはいかがですか。この例のように意外に身近なビジネスが見つかるかもしれません。



